家系調査は最新の戸籍・除籍から着手し、父母系のどのラインを辿るか範囲を決めて、現行から旧制へ年代順に請求・読み解くのが定石です。
幕末期まで遡れたら、その年代に重なる分限帳・侍帳・給帳などを地名や藩名で当て、氏名・通称・役職・禄高の一致や近似から候補を絞り込みます。
「分限帳」は藩内武士の「職員録」に近い体裁ですが、全員名簿ではなく掲載割合は概ね一部(1~2割程度)に留まることを前提に、見当たらない場合の代替史料も用意します。
参考)江戸時代の藩士を調べる
参考)分限帳の調べ方。江戸時代の武士を探す方法
参考リンク(このセクションの所蔵検索に便利)
国立国会図書館 リサーチ・ナビ「江戸時代の藩士を調べる」
藩ごとに名称が異なり、「分限帳」以外に「侍帳」「給帳」「着到帳」などの呼称が使われているため、同義語を意識した横断検索が不可欠です。
県立・市立図書館や郷土資料館、文書館に加え、県史・市町村史の本文や付録に翻刻収録される例も多く、活字化の有無で難易度と作業時間が変わります。
具体的な館種では、国立公文書館・地方文書館・県立図書館・大学史料館・博物館にまとまって残る傾向があり、館内OPACで「藩名+分限」「藩名+侍帳」を試すと成果が出ます。
参考)「調べ方」の手引き/行田市
参考リンク(このセクションの名称バリエーション確認に)
家樹「分限帳の調べ方」:名称・目的・代替史料の整理
判読は「変体仮名」「草書」「通称」などが壁になりがちですが、くずし字データベースで字形を照合し、原本画像で前後の連綿も確認できると精度が上がります。
AIくずし字認識(一文字・複数文字)を併用し、候補を当てた後に地名・役職・禄高の整合で裏取りする「機械+人手」の二段構えが実務的です。
補助辞典として古文書解読辞典類や通称に頻出の文字リストを手元に置くと、武家の通称・旧字体・異体字を読み分けやすくなります。
参考)「帳」(U+5E33)
参考)江戸時代の幕臣を調べる
参考リンク(このセクションの判読支援に最適)
CODH くずし字データベース検索(AI認識・字形照合)
分限帳の核心は「氏名(通称含む)」「役職」「禄高(石高・扶持米)」「席次」で、これらの組み合わせから身分層・配置・昇進可能性が見えてきます。
旗本・幕臣クラスでは、役職ごとにおおよその禄高レンジや役高が紐づくため、記載から職掌の重みや格式を逆算できます。
藩内職制でも、番方(軍事系)と役方(行政系)の区分や所役の石高目安が展示資料で具体化されており、分限帳の列項と照合して意味付けすると解像度が上がります。
参考)https://www.jstage.jst.go.jp/article/kinseishikenkyukai/30/0/30_15/_pdf/-char/ja
参考リンク(このセクションの制度理解に)
J-Stage「江戸幕府御家人の任用制と役職構造」
国立国会図書館のデジタル化資料には分限帳・給禄帳の翻刻・影印が含まれ、登録利用者は在宅で「個人送信」対象を閲覧できます(国内居住・本登録が条件)。
ただし国外居住者は個人送信利用ができないため、最寄りの図書館の「図書館送信」端末で閲覧するか、所蔵館に複写・現地閲覧を相談する運用になります。
NDLのテーマ別ガイド(リサーチ・ナビ)は検索語と分類の工夫が網羅性を高め、地元館OPACと併用して所在・版次・翻刻の有無を突き止める導線として有効です。
参考)萩藩給禄帳
参考リンク(このセクションの遠隔閲覧要件の確認に)
NDLサーチ「肥後加藤侯分限帳」:個人送信の可否例
城下町の屋敷割絵図に描かれた当主名を時系列に並べ、分限帳の氏名・役列と重ねると、欠損区間を点線で補いながら家督の流れを推定できます。
分限帳の記載が上士中心で下士や扶持取が別帳になる藩では、侍帳・無給帳・扶持方帳を併せ読みして「家」の継続を面で追うと発見が増えます。
家系図の側からも、人名の一致だけでなく役職・禄高・菩提寺・氏神・家紋など多属性で照合し、複数資料の重なりから本人性を高める戦略が有効です。
参考)誰でもできる自分のル—ツの調べ方
参考)http://unkkyoudan.mond.jp/rounk/shyumi/kokudaka1000~5000.htm
参考リンク(このセクションの照合設計に)
家系図作成に役立つ盛岡藩士の調べ方(分限帳・侍帳の所在例)
詰まり所1:見つかったのに本人か確信が持てない。対策は「二要素一致」を超えて三要素(役職・禄高・屋敷位置や菩提寺)で合致を取ることです。
詰まり所2:そもそも載っていない。藩の編集方針・身分層の切り分けを疑い、別帳・別巻・別シリーズ(無給帳・扶持帳)や市町村史の翻刻をあたり直します。
詰まり所3:読めない。AIくずし字+字形DBで候補を作り、凡例・索引で語彙を確定する順序に変えるとブレークスルーが起きやすいです。
参考リンク(このセクションの閲覧条件の事前確認に)
NDL「江戸時代の幕臣を調べる」:翻刻+人名・役職索引の活用